この仕事をしていると時々、作品に恋をすることがあります。そう頻繁にある事ではないですが、他のどんな言葉よりもそう表現するのが一番しっくりくるのです。なぜ?と聞かれても、自分の中に説明できるような明確な理由はみつからない。ただただそれが愛おしい。私にとって福永さんの土佐手縞はまさにそのものです。
1941年、高地で生まれた福永さんは学校卒業後デザインの道へ。そして29歳の時、織の道へと進みます。綴織の人間国宝、細見華岳さんのもとでの修業後、丹波布と出会います。
丹波布の、そして綿のもつ豊かな表情に、一瞬で心を奪われた福永さん。「こんな布を織りたい」そう決心してからは丹波へ移り住み、一途に一心に、ひたすらに木綿と向き合ってきました。そして1999年、故郷の高知へ移り住み、現在の工房(棉戯房)で作品作りを始めます。
福永さんの工房にて…
福永さんの作品は全て、福永さんが綿花から紡いだ糸が使われています。
材料となる綿は、メキシコ綿やインド綿、米綿などを作品によって使いわけます。工房の縁側で糸車を回す福永さんの手から、糸が紡ぎだされていく様子はまさに魔法のよう。
「この糸車の調節が本当に微妙なの。だからどんなにお願いされてもこれだけはほかの場所にもってはいけないのよ」
その言葉の通り、本当に繊細で微妙な工程を自然体で行う福永さんの姿に、積み重ねてきた時間の長さを感じます。
土佐手縞の最大の特徴ともいえるのが、6・8枚の綜絖(そうこう)を使い織られる綾織です。
丹波布を始め、一般的に綿織物は平織が基本ですが、福永さんは独学で綾織を習得し、「丹波布の復元」だけではない、独自の作品作りを追求してきました。
何度も何度も草木の色を重ねた糸を機にかけ、糸と会話するように織り進める。そうして複雑に重なり合う糸が、一枚の布になる。福永さんの作品から感じる、不思議な色の広がりと風合いは、この綾織が一つの理由なのかもしれません。
8枚綜絖で織り出される、複雑な糸の重なり…
前置きが大変長くなりましたが、福永世紀子さんの土佐手縞八寸名古屋帯です。
草木染め独特の深い赤錆色の地と菱の綾織を背景に、心地よい間隔で横段が織り出されています。以前に織られた裂地を拝見して、制作をお願いしたこちらの帯地。
「福永さん、これお願いできますか?」
「あなたはまたそんな難しいのを選んで。笑 …気長に待ってちょうだいよ。」
そんな福永さんとの会話から1年半ほどでしょうか。待った甲斐のある、素晴らしい帯地が織りあがりました。
木綿の帯はどんな着物に合せればよいですか?と言うご質問をよく頂きます。もちろん同じ木綿の素材はよく合いますし、絹であっても織りに味わいのある紬、結城紬や大島紬等に合わせて頂くと帯が大変よく映えます。帯の生地風を考えると、袷時期(10月から翌年5月)にお締め頂くのが素敵ではないでしょうか。
流行に左右されない、力強い帯地です。少しずつ変化していく風合いを楽しみながら、末永くご愛用頂ければ幸いです。お手持ちのお着物とのコーディネイトなどお気軽にご相談下さい。
土佐手縞 八寸名古屋帯(福永世紀子・手紡木綿)
素材 手紡ぎ綿100%
長さ 約3.7m
巾 32cm
納期 寸法確定後約25日*お急ぎの場合はご相談下さい。
着用時期 10月〜翌年5月(袷時期)
着物合せ 木綿・紬・小紋・御召等
■お仕立てについて
弊店にて検品後、弊店の基準に合格した国内の熟練の和裁士さんにお仕立てをお願いしています。寸法のご相談などございましたら、お申し付けください。
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■お手入れについて
日常のお手入れは、部分的なしみ落としで十分です。長期間の保存の前や、全体の汚れが気になる場合は、ドライクリーニングをお薦めしています。ご家庭での水洗いは出来ませんので、ご注意下さい。
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■土佐手縞・福永世紀子について
この仕事をしていると時々、作品に恋をすることがあります。そう頻繁にある事ではないですが、他のどんな言葉よりもそう表現するのが一番しっくりくるのです。なぜ?と聞かれても、自分の中に説明できるような明確な理由はみつからない。ただただそれが愛おしい…続きは下記をご覧ください。
>染と織たかはし|読み物|一途に、一心に -土佐手縞・福永世紀子-