野村半平(のむらはんぺい)氏をご存知でしょうか。
明治37年結城市で生まれた野村半平氏は、高等小学校を卒業後、結城紬の職人の道へ。戦中の奢侈禁止令から結城を守り、国の重要無形文化財指定に奔走した、まさに生涯を結城紬に捧げた人です。国の文化財指定(人間国宝)がまだ個人だけだった頃、“指定の要望を断り続けた”そんな逸話も伝わる稀有な職人です。
そして今回ご紹介する、本場夏結城。
半平氏、そしてご子息の野村福一さんと妻である野村キミさんによって生み出された幻ともいえる結城紬です。半平氏と同様に、結城紬に人生を捧げてきた福一さんご夫婦。“230亀甲”という、結城紬の歴史の中でも最も細かな絣を完成させてたのも、福一さんご夫妻です。そんな、産地の中でも指折りの職人が“結城本来の良さを損なわず、単衣から夏にかけて御召いただけるように”そんな想いで作り上げたのが、本場夏結城なのです。
通常の結城紬と同じように、袋真綿から手紡ぎした上質の糸(160亀甲細工に用いられる糸の細さ)に、約2割、こちらも手紡ぎの苧麻糸が織り込まれています。そして通常の結城と同じように、“絣くくり”そして“地機による織り”などほとんどの工程が手仕事の積み重ねの為、年間の生産反数はわずか数点。大変手間と時間のかかる織物です。
撚糸と麻糸を用いるため、一般的な本場結城紬の証紙は使用できませんが、まぎれもなく結城紬と同等の仕事が重ねられています。そして故人である半平氏への敬愛を込め、現在も反端の証紙には“本場夏結城 野村半平”の文字が用いられています。
すっきりとした乳白色の地に、経絣によって細長い経菱の絣柄が織り出されています。通常きっちりと絣(柄)を合わせることを良しとする結城ですが、こちらは敢えて“絣あし”と呼ばれる微妙な絣糸のずらしを用いています。
基本を踏まえた上での動きのある表現、そして藍の濃淡が織に奥行を与えてくれています。
お写真では少しお伝えしづらいのですが、柔らかな透け感が感じられる生地風です。“夏結城”と言う名前ですが、私は単衣の頃からお召頂ければと思います。さらりとした独特の風合い、そして上質の細糸と地機によって生まれる軽やかな着心地は唯一無二の風合いです。お手持ちの帯地とのコーディネイトなどお気軽にご相談下さい。
本場夏結城 野村半平(淡生成り・経絣)
素材 絹80% 麻20%
長さ 約12.5m
巾 約40cm
納期 寸法確定後約30日*お急ぎの場合はご相談下さい。
着用時期 5月後半-10月初め
参考市場価格 1.680.000円
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